上早川の歴史と伝説 その93

前回は、ふれあい祭りで披露された水嶋礒部神社の神楽を取り上げました。能生の神社などでは神楽の奉納を伴う春・秋祭りが数多く継承されていますが、早川の祭礼では日光寺の春祭りだけのようです。恐らく早川でもかつては多くの神社で神楽が奉納されていたことでしょう。そこで、今回は早川に伝わる伝統芸能を紹介しておきます。

12月1日に上演された新町翁舞式「翁の舞」

昨年の12月1日(日)、新町区民会館において「新町翁舞式」の披露がありました。この芸能は国家の慶事や地域の祝い事などで披露され、天皇が即位した令和元年11月3日以来の上演となります。この芸能、平成8年12月に糸魚川市の指定文化財に指定されましたが、昭和34年の皇太子(現上皇)の御成婚を祈念して以来、糸魚川市市制40周年記念の郷土芸能祭の平成6年11月まで長らく披露されませんでした。このため平成6年の披露の際はたいへん苦労したらしく、今回の披露は、この芸能の周知とスムーズな継承のためとのことです。

「千歳の舞」

さて、この「翁舞式」は、天下泰平、五穀豊穣を願って披露される能で、「千歳(せんざい)」、「翁(おきな)」、「三番叟(さんばそう)」から構成されます。千歳の舞は翁の前の露払い、翁の舞は天下泰平を祈り、三番叟は五穀豊穣を願う舞であるとされます。それぞれの舞の所作の詳細は解りませんが、三番叟の舞には地固めのような足拍子、種まきのような所作など農耕に関わる所作を確認できます。もちろん、舞手のほかに大鼓、小鼓、笛、地謡など15名ほどの構成が必要で、その担い手の継承も課題のようです。

「三番叟」

祭りに伴う舞楽や神楽などは市内各地で現在も継承されていますが、かつては山之坊で歌舞伎、川詰では人形歌舞伎が演じられていたそうです。恐らく市内各地の集落に様々な芸能が伝えられていたのでしょうが、社会情勢の変化に伴って忘れ去られたようです。市内において「翁舞式」のような能は新町以外には伝わっておらず、まさに市指定文化財に相応しい伝統芸能と言えるでしょう。保存会の皆様の活動に敬意を表するとともに、後世に伝わることを願ってやみません。(木)