
開局された有線放送
上早川にも新農村建設の計画に指定されて早くも一年が過ぎてしまった。

予てからの計画であった農事有線放送は実施。そして着工、工事完了し試験放送開始。村民の待ちに待った喜びの十一月二十八日、盛大な開局式を終わらせ組合員の家庭に一斉に放送開始した。通信連絡にはまったく便利である。
ラジオの歌やニュースは聞ける。だが今のところは、もの珍しいのであろう、それとも使用料金も今月の所はいらぬとあってっか、使用も激しそうである。
モシモシ…モシモシAさんBさんCさんとしきりなし。夕方、家から隣の家へ呼び出して今晩お風呂あるから入りに来てと、風呂の催促。こんなものもある、中学生であろう、今テレビ放送は良いのを映しているから見に来なさい、なんてチャッカリしたのから、ひどいのになると農放の取っていない家へ「テレビ見に来い」と連絡してください、なんていう人もあるそうだ。

静かにして聞いていると、他人同士で話す声が良く聞こえて来るのである。これでは彼女への相引きも人に聞かれては、まったく心がひける。とは言ったもの農放番号帳を見てもおやじの名前や家の屋号では開局したばかりの農放だけに彼女の呼び出しも不可能と言った所だ。
家の奥で仕事をしていた所へふとAさん、Aさん…屋号を呼び出したので「はい」…とばかり玄関へ出たが、さて、誰もいない。確かに誰か呼んだのに、と思っているところへ「Aさん、Aさん」…とまた呼んだ。なんだ、農放かと安心。これじゃ誰もいないはずだと、こんな傑作なエピソードもある。

さて、農協の放送室へ入ると、また忙しそうである。もう次から次へとしきりなしである。
所がまったく困った人もあるそうで、交換手を困らせるそうである。俺の歌を聞いてくれないか、とか俺のギターは上手だから引くのを聞いてくれないか、と言ったのがあって交換手は断りきれないそうだ。しかしこれもめずらしまぎれの事でこれからも面白いことや困ったことが生まれるかも知れないが、とにかくわれわれの夢を実現したのだからこの上もない喜びであり、ややもすると見捨てがちな農村に明るい光が輝き始めたのだから、大いに活用して立派な農村を作り上げたいものだ。

