中早川青年会発行「わかもの」創刊号_P27

弁当のおかず

ある日俺は母に、もっとうめえおかずはねえかと言った。毎日毎日漬物ばっかりじゃ仕事する張合いがなくなってしまう。

母は「バカ言うな、漬物ほどうまいおかずが世の中にあるか」「だって毎日漬物ばっかじゃ体がやりきれねえ、たまには魚でも入れてくんねえかなぁ」「バカ言え、おらあたりは漬物と魚は同じだ、ぜいたく言うな」と母は俺が持って出る弁当に大根の漬物を入れている。
俺は母に「いずこも同じ秋の夕暮れ」と言ったが、母は「あたりまえ、蛙の子は蛙だ」と言った。見ると母のかみの毛が油気のないにぶい光でみにくかった。

母は自分でかみの毛に油をつけたいのにつけないでがまんしているのに、俺は母に何故こんな無理な要求をしたかと思うと、まるで母を泣かせたような気がした。

だがそう言ってもやはり弁当のおかずは魚がほしいような気がする。俺は考えてみた。考えようによると、漬物が一番うまいような気がする。

しかし、やっぱり魚のおかずがほしい。俺は今、魚のおかずが一番くいたいのだ。
一日弁当持ちで、三百円の日当じゃ、やはり弁当のおかずに魚もいれられないのだ。
~おわり~

昭和34年8月15日発行の「わかもの」創刊号より