上早川の歴史と伝説 (その二十一)

上早川のお宝   ~闊歩する国宝?カモシカ~

前回は上早川のお宝として “ライチョウ”を紹介しました。上早川には同じ特別天然記念物の“カモシカ”も生息し、見かけた方も少なくないと思います。

草食でウシ科のカモシカは、子牛ほどの大きさで短い二本の角をもち、一産一仔のため繁殖力が弱く、優れた毛皮が珍重されたことから頭数を減らしたようです。

比較的おとなしく、人と会っても直ぐに逃げずこちらを静観していることから“山の哲学者”などとも呼ばれ、昭和三十年に指定されて保護されてきました。市内でも姫川以西の山岳地帯に生息が限られていたようですが、徐々に生息域を広め、近年は人家近くや海岸部にも出没して困らせています。しかし、ここ数年はイノシシやニホンジカに追われて再び生息域を狭めているようで、里山での出没は減っているようです。かつては、狩猟の恰好の獲物として乱獲され、今ではよそ者のイノシシやシカに縄張りを追われて肩身の狭い思いをしているようです。

カモシカ、イノシシ、シカ、サル、クマなどの大型獣によるバトルが繰り広げられている私たちの周りに広がる深い森は、いわゆる国宝と同格の特別天然記念物カモシカも闊歩できる豊かな自然に恵まれている証でもあるといえるでしょう。

(木島)

ほこんたけ通信2018.05.10号より